米軍調達で自社で取り組むことのできそうな案件が出た場合、おそらく応札するかどうかを判断する際に一つの基準があるだろう。プロジェクト規模、作業の技術レベル、予算、人員など、これらの要素を総合的に頭の中で計算し、応札するかしないかを判断すると思う。
ただ、今上で挙げた要素のどれか一つでも、案件に応札しない、あるいは応札を見送ることは、とてももったいないことだ。
完璧な案件は存在しない
もしあなたが、適切なプロジェクトの規模、適切な作業の技術レベル、適切な予算、適切な人員などの要素を満たしたプロジェクトが見つかるまでずっと待ち続ける、自分の希望の要素がすべて揃った案件を探し続けるのであれば、とても厳しい真実を伝えなければならない。それは「完璧な要素を満たした案件は決して存在しない」ということだ。
もしあなたに明確なビジネス戦略をもって米軍ビジネスに挑むのであれば、ある程度札を入れるかどうかを判断するための基準を持つべきである。そして、先ほど述べたような要素を判断材料とする場合、すべての条件を満たす案件に応札するのであれば、いくつかの条件を完璧に満たさなくても、何かしらで条件を満たしていない要素があったとしても、それは問題ない。
例えば人手不足という要素が満たされていないとしよう。そんな場合は【外部の協力】という形の選択肢を採れるし、予算に関して金額予想が大きすぎると判断すれば、予算規模の大きな企業とジョイントベンチャーなどの連携を模索するのも一つの手になる。
もしあなたが案件取得を目指し、米軍ビジネスで収益化を考えるのであれば、自社ですべてのことを完結するのではなく、自社の【外部】を使うことを考えてみることをお勧めする。
そこで少し今述べたことの例として、私が過去に調達案件を担当したときの例を一つ挙げてどう対処したのかを話したい。
海軍基地の総合施設管理業務の例
今から4年前、沖縄県内の海軍基地(キャンプキンザーから北部訓練施設ゴンザルベス)の施設機械設備類を維持管理業務の案件が、米軍調達公告として出された。そこでの機械設備の維持管理には、エレベーター、カーショップの油圧式カーリフト、ゲート前にあるセキュリティゲートバリア、クレーンのホイスト、北部訓練施設の訓練用ワイヤー式ブリッジと降下訓練用のロープなどの施設機械設備類の定期点検、メンテナンス作業が含まれていた。
ほぼ毎月点検となるこのプロジェクトで、自社で点検を行うことが難しい業務があり、たとえ取れたとしても点検業務に割く人手も足りないということから、一旦は私の部署でこの案件に応札することをあきらめかけていた。
しかし私は、自社ですべて行う必要はなく、外部の企業の協力を使うことができる上、最小人数で点検業務をすることができると判断し、早速上層部の説得に当たった。
エレベーターのメンテナンス業務はA社に、カーショップの油圧式リフトの点検はB社に、セキュリティゲートバリアの点検は自社で、クレーンのホイスト(ワイヤーの巻き上げ機)はC社、北部訓練場のワイヤー式ブリッジはD社に、というように各作業項目に応じて、外部の企業に連絡を取り、作業内容を伝えたうえで作業費の見積もりをお願いした。
そして自社で当たる作業にどれくらいの人員が必要で、時間はどれくらいかかるのかをざっと計算し、それをもとに作業単価を導き出した。それぞれの協力を要請した企業からの見積もりを取り寄せ、利益を加えて最終的な積算額を出し、上層部からの許可を得て応札額を提出書類に記入し札を入れた。
最終的には、別の企業が落札した案件なのだが、もし、案件の内容を見て「応札しない」と判断を下せばきっと後悔したと思う。「できるかできないか」の判断で、私は「どうやったらその案件を取りに行けるだろうか」と思考を変換することで、協力企業を探し出し、交渉しなければ応札することはできなかっただろう。
結局は自社で案件を獲得することはできなかったにせよ、応札するという行動が、結局は最終的に落札のチャンスを広げることに変わりはない。しかし応札をしないことでチャンスはゼロだ。何が何でも応札しなければゼロである。
しかしこの案件に取り組んだことで分かること、学びは非常に多くあった。しかし応札しなければ売上はゼロ、学びはゼロだ。とにかく大切なことは、応札することで獲得できる可能性をゼロにしないことである。
常に【外部】を使うことを意識しよう!
私はクライアントや見込み客には常に外部を利用することをお勧めしているし、その重要性を説いている。もちろんそんなことはあなたも私よりもご存知だろう。
そして、外部の協力を得て行動することこそ、初めてビジネスとして成り立つわけだ。応札する判断材料として、人員や、予算、プロジェクトの規模、作業レベルなどで自社の希望を満たせないのであれば、積極的に外部を使えば解決策は必ず見つかる。
自社でできることよりも、足りない部分を補う解決策を探す。これこそが米軍ビジネスに参入できない大きな原因の一つだ。
自社に足りない部分をカバーするにはどうすれば良いか。この質問に答えることが米軍ビジネス参入の第一歩となる。