私がかつて米軍ビジネスに関わり始めたころの話だ。
昼休憩をとっていると、「ウー!」と突然サイレンが鳴り響いた。基地内に響き渡るほどの大きな音だった。なぜ突然サイレンが鳴ったのか理由も知らず、「とうとう沖縄に攻撃が来たのか!」と少し不安になり、こんな妄想をしてしまう。しかしサイレンが鳴り終わると、「これは訓練です。サイレンが鳴り終わるまでしばらくお待ちください」というアナウンスが流れた。「なんだ、訓練か」と安堵したのを覚えている。
米軍基地がよそと違う理由
米軍基地は軍事基地である。軍事基地である以上、訓練はつきものだ。嘉手納は空軍基地という性格上、警報が鳴った後の迅速な動き、しかるべき行動をとることが求められる。その行動訓練としてサイレンを鳴らし、何分で基地内の兵士がしかるべき行動をとれるのかを確認する一つの「行事」が行われるのだ。
訓練を実施する場合、契約事務所を通して、いつどこで訓練を実施する旨、訓練の妨げにならないようにとの通達が元請け企業に来る。元請け企業はその通達をもとに、作業従事者に通達をするわけだ。
キャンプシュワブやキャンプハンセンでは500人の兵士が通過
500人の兵士があなたの目の前、しかも真横を通っていくことを想像できるだろうか。いくら訓練とはいえ、怖いものだ。
私がキャンプシュワブ(辺野古基地)で、目的地である施設に車を走らせていた時、目の前には海兵隊憲兵(軍警察)の車が止まっていた。憲兵は車を止めるよう手のひらを示し、私は車を彼の前に止めた。「今から訓練で兵士が通過するからエンジンを止めその場で待機するように」と言われた。私は憲兵の指示に従い、車のエンジンを止めその場で待機した。
そしてしばらく、おそらく2、3分くらいだろうか。グリーンの短パンにTシャツの屈強な男たちが、ものすごい数で目の前からやってきたではないか!「ヤバッ!」10人とかそんな数ではない。おそらく100人はゆうに越えている。200人?もっとだ。
ザッ、ザッ、ザッ。私の乗っている車をよけ、そばを走っていくのだ。グリーンの短パン、Tシャツのマッチョたちが通り過ぎていく。すごく威圧感がある。時々車を手のひらで「ポンポン」と何人かの兵士が叩く。きっと彼はわざわざ車を止めた私に感謝してくれたのかもしれないが、ポンポン車を叩くたびに、私はびくっとする。これが10分ぐらい続くのだ。
憲兵が後続部隊を確認し、車を動かしても良いと手を振り合図を出した。私はその憲兵のそばを通り過ぎる際、彼に質問をした。「いったいどれくらいの兵隊が通っていったのですか?」と。憲兵は「たぶん500人くらいかな?Battalionだから」と答えた。
※Battalionは軍の集合体の単位で、1 Battalionでおよそ500人規模で編成される。
私:「Battalion!」
辺野古の少し下にあるキャンプハンセンでも同じ光景に何度も遭遇したことがある。これが軍事基地だと実感する瞬間でもある。
軍事訓練があった場合は?
基地内にいる民間人、作業従事者は、軍の活動を妨げることをしてはならないというルールがある。たとえどんなことがあっても、軍の活動が優先されるルールだ。
目の前を兵士が訓練で走っていれば、車を路肩に止めてエンジンを切る。彼らが通過するまではエンジンをかけてはいけない。サイレンが鳴れば、彼らの訓練の邪魔にならないように待機しておく。
米軍基地内では、日常生活では起こらないようなことが起きる。米軍基地内のルールについてよくわからない場合は、契約事務所に連絡を取り、必要な守るべきルールについて知っておくことが大切だ。