前回はビジネスの選択肢を拡大することで落札するチャンスを増やす方法について話した。
ビジネスには戦術と戦略がある。戦術とは、目的を達成する手段であり、戦略とは、達成すべき目標のことである。ここは混同してはいけないが、戦術と戦略は全く違うものだ。明確な目標があり、目標達成のための手段を活用してこそ初めてビジネスは前へと進む。
昨今、米軍ビジネスには日本国内はもとより、海外からの新規参入企業が相次ぎ、入札状況も激化し始めている。そのような状況のもと米軍ビジネスに参入を果たし案件を獲得するためにも入札戦略を立てることがますます大切になってきた。
今日は米軍ビジネスであなたの会社の入札戦略を立てるための方法を伝える。
何を選ぶかではなく、何ができるか?
前回のメールで「タコのようになれ」という話をした。米軍ビジネスにせっかく参入するのだから勝ちに行きたいと考えるだろう。
熾烈な競争を勝ち抜くには、仕事の選択肢を増やし勝つ確率を上げることが大切だと話した。あなたのメインビジネスとは別の選択肢を増やすことはあなたのビジネスの可能性を広げることにつながる。
米軍ビジネスには様々な調達案件が毎日のように調達サイトに上がっていく。それら調達案件があなたの会社のビジネスには関係ないような案件でも、「どのようにすればその案件の業務を自社でできるか」と視点を変えることで、その調達案件はあなたのビジネスチャンスへと変わる。専門企業の協力を仰ぐことができたり、企業同士でパートナー契約を結んで取りに行くといった選択肢を持つことが案件取得の可能性を上げるのだ。ビジネスの選択肢を増やすことですべてがあなたの会社にとってビジネスチャンスだということがわかる。
戦場を変える
ここからもっと視点を変えよう。
もしあなたの会社の拠点が沖縄であれば、戦場を変えて案件取得を目指すという考え方がある。戦国時代でも自軍に形勢不利な地勢の場合、地の利を生かし劣勢を挽回するために軍師はあえて地勢の悪い状況では敵と正面対決することなく、自軍に有利な場所で戦い勝利を収めた。
米軍の調達案件のほぼ半数がここ沖縄にある。その分ここ沖縄での調達案件を取得するのは激しい競争を勝ち抜かなければならないという厳しい世界が待ち受けている。それを長崎の佐世保や山口の岩国、青森の三沢など沖縄以外でも案件獲得するという選択肢がある。
実際に私が務めていた企業では、積極的に県外案件を取りに行く動きをした。例えばアメリカ大使館の施設管理業務や岩国の海軍病院メンテナンス、横田基地の洗濯機と乾燥機の調達案件など、沖縄という場所を変えて案件を取りに行った。最終的には応札までの時間が短すぎて積算が間に合わず断念したが、競合が少ないことも知ることができた上、県外企業でも取りに行けるという自信がついた。
もちろん慣れない土地で新規参入をするということは、大切な情報収集でもあなたにとって不利な立場に身を置くことになる。けれども情報収集の面では不利であっても、競合企業が少ない場所という面ではあなたの会社にとっては有利に働く可能性がある。
大量に爆弾を投下する
つまり多くの札を入れるということである。多くの案件が調達公告サイトに掲示されている案件であなたの会社で取り扱いできる案件に応札するのだ。
あなたの会社の選択肢が広ければ広いほど案件獲得のチャンスが広がる分、それだけ応札する案件が増えるので積算チームに負担は大きくなる。一つでも案件を獲得するという戦略であれば、一気に爆弾を投下する無差別爆撃で案件を取得するという方法も一つの戦略だ。
予算規模に合わせて取得を目指す
2020年1月に連邦調達規則が変更され、建設案件は15万ドル以下から25万ドル以下の案件であればボンドの差し入れが不要になった。
つまり25万ドル(日本円でおよそ2625万円、1ドル=105円)までの建設案件であれば、ボンドを持たない企業でも案件取得ができるということである。他にも改修や補修、新築建て替えの建設工事案件以外の案件であれば、予算規模が大きい(5000万円以上)サービス契約や機械設備取り換え、物品調達などの案件はボンドが不要な場合もある。あなたの会社の予算規模に応じて案件の選択を行うことも一つの戦略になる。
一番シンプルな入札戦略=選択肢を増やし案件を取りに行く
前回から話しているが、あなたのビジネスの選択肢を増やすことは、定款変更などの面倒な手続きも必要ないし、協力してくれる企業さえ見つけることができればそんなに難しいことではない。
あなたの会社が競合の多い業種であればあるほど、競争率が激しいのはある程度予測できるだろう。あなたのビジネスの業種にプラスアルファ加えることで案件獲得のチャンスが増える。そうすることで直接競合との競争を避け、別の案件で獲得チャンスを目指す。これこそが一番シンプルな入札戦略であり、私がお会いする企業すべてに選択肢を増やし案件取得を目指す簡単な方法だと話している。
もちろん、選択肢を増やすことが確実に案件取得につながるかという保証はできないが、選択肢を増やすことで案件獲得の確率が上がることは保証できる。
あなたが真剣に米軍ビジネスに参入を目指すのであれば入札戦略を立てることはとても大切なことだ。そのためにあなたの会社が何ができるのかを考える時間を作って参入してほしい。参入するのだから、案件を取りに行ってほしい。案件を取得して初めてあなたのプロジェクトがスタートする。その第一歩で案件を獲得してほしいと私は考えている。
次回は、もう少し米軍ビジネス界隈の実情について話したい。