from;マエモリ オフィスより
まだ私が米軍ビジネスの政界に飛び込んでままならない頃事件が起きた。
米軍ビジネスでも日本と同じように定期的にミーティングが開かれる。
月一回行われるミーティングでは、毎月の作業の進捗具合や、作業個所の技術的な問題点の指摘や改善点、作業スケジュールの確認などを話し合う。
特に何事もなければ、30分くらいでそのミーティングは終わる。
基本ミーティングには契約担当官、契約担当官代理、品質管理担当官、そして我々業者と協力業者、そして通訳担当者が集まって話し合いを行うわけだ。
ミーティングでは、様々な技術的な専門用語が飛び交い、専門用語がどういう意味かを知らなければ英語ができるものでも混乱してしまい何を話しているのかついていけない。
その時話し合われたのは、メンテナンスを請け負っている施設の機械に不具合が生じ、修理する必要があるとの報告内容について話し合われていた。
そしてその機械を修理するのに予算がどれくらいかかるのか、そして修理するとしたらどれくらい機械を止めなければならないのか?などだ。
米軍側は「予算承認はKO次第だ」という。
そして私の上司は「KOに聞いてみることにします」と返した。
すでにこの世界の初心者だった私は頭が混乱していた。専門用語、専門用語、専門用語でのミーティングについていけなかった。そしてでた「KO」という単語。
「誰が彼をKOしたの????」
「ボクシングについて真面目に話しているの?」
「また新たなアメリカのスラングか何か?」
ミーティングも終わりに差し掛かり、契約担当官代理から
「何か質問はありますか?」と締めの言葉を述べたとき私は手を上げ、質問した。
「誰がノックアウトされたのですか?」
その質問を聞いたミーティング参加者はぽかんと私を眺めている。
「というのもKO、KOってミーティングの間ずっと話していたものですから、その意味が分からずずっと、ボクシングの話について話していると思っていたけれど、そうすると今話していることのつじつまが合わないいのです。」
その質問の意味を理解した一同が大笑いした。
一人は大きな声で大笑いしている。
でもこちらはまじめな質問だ。
で、ある米軍担当者がこたえた意味が
「KOとは彼のことです。」と指が示した人物が
契約担当官だった。契約担当官???
つまり契約担当官、Kontracting Officerなのだ。
海軍では特に契約担当官のことをKOと呼ぶのはほかの略語と混同しないようにするための措置なのだという。
本当の英語で契約担当官のことは、Contracting Officer=COと略することができるが、海軍ではCOのことをCommanding Officer=司令官の意味を指す。
それで意味を混同しないようにあえて略語の頭文字を同じ発音のKにしてKOと呼んでいるらしいのだ。
特にKOもCOもいろんな場面で使われる略語なので注意して使わないと
間違える専門用語だ。
場所を変えれば、陸軍、空軍では契約担当官のことをCOと呼ぶし、司令官はCommanderと呼ぶ。
同じ米軍でも、海軍、空軍、陸軍、海兵隊でも微妙に略語の使い方が変わったりすることがあるので、契約ごとに用いる専門用語の意味を知ることが重要だ。
プロジェクトで専門用語を取り違えてミスを犯さないため専門用語を学ぼう。
私のように大恥をかかなくて済む…
P.S:KOはボクシングだけで使う言葉ではないことを忘れずに…