米軍ビジネスでは、仕様書は教科書のようなものだ。仕様書があって初めてプロジェクトがどういうもので、どんなことが求められているか、どんな基準があるのか、どんな能力がなければならないのか、といったことが書かれている。つまり、プロジェクトのすべてがこの仕様書を中心に回るということにもなる。
だがしかし、仕様書は完璧な存在ではない。
仕様書はコピペで仕上げたもの
仕様書が完璧ではない理由。それは、仕様書という中身がテンプレートで書き上げられたものであるということだ。プロジェクトに合った内容に若干修正を加えて、テンプレートによって書き上げられたものが仕様書なのである。
実際、スペックライターと呼ばれる仕様書作成の担当者は、ゼロから仕様書を書き上げることは非常に困難だ。だからこそ業務効率を上げるべく、仕様書をテンプレートで書き上げているわけだ。テンプレートを用いて文章を書き上げるのはとても賢い方法だし、仕事を早く仕上げることができる大きなメリットがある。
一方で、デメリットもある。例えば、今では使われていない古い基準がそのまま設定されていたり、プロジェクトの性格に合わない記述があったり、仕様書とともに提供されている図面やカタログ、試験結果などとの内容が仕様書に合わないなど、矛盾が生じる場合があるのだ。そして、人間が仕様書のテンプレートを用いて記述してしまい、そのプロジェクトの性格を理解していない人間が起こすミス、つまりヒューマンエラーが生じるという性格もデメリットである。
仕様書は完璧じゃない…けれども
プロジェクトはすべて仕様書中心で回る。プロジェクトにおいて仕様書は絶対的立場なのだ。つまりこれに従ってプロジェクトを進めなければならない。
しかし、この仕様書は、入札案件として正式にリリースされればその矛盾点を修正することができる。それは**Amendment(アメンドメント)**と呼ばれる、仕様書記載変更によって賄われる。
けれども、落札した場合に仕様書の矛盾を発見した場合、変更はできない。なぜならば、落札した業者は【仕様書など応札の参考書類の記述を事実として受け入れて札を入れた】という前提でプロジェクトが進められるからだ。仕様書の変更申請はできるが、それには米軍契約事務所との交渉が必要になる。
この仕様書の矛盾に対して米軍プロジェクトを獲得した企業が頭を抱える一番の原因となるのだ。
仕様書は完璧ではない。けれども仕様書は絶対的存在だ。これを頭の中で覚えておけば、プロジェクトを獲得し問題が発生したとしても、うまく対処できるだろう。矛盾を仕様書の中で見つけた場合、交渉材料を見つけやすくなるはずだ。