私がかつて米軍工事で経験した話だ。
米軍プロジェクトは、品質管理項目の一つに、米軍のプロジェクト管理を担う契約担当官代理(COR)とのミーティングを行うよう求められている。ミーティングの内容は、プロジェクトの進捗、今後の作業予定、プロジェクト進行における問題点、問題解決の具体的なアクションなどを話し合う。 ※安全管理ミーティングは別だ。
こうした内容は通常、建設プロジェクト関連では毎週定期的に行う。また施設管理や長期サービス契約では、月に一度といった頻度であるのが通常だ。そんな中、業務状況について何ら問題なく、COR側から特に指摘事項がなければ、ミーティングはサクッと30分くらいで終わってしまう。けれども、プロジェクトの進行における問題についての指摘があれば、午前中時間がつぶれてしまうほど議論が過熱する場合がある(笑)。たまにユーザー(軍人さん)はその議論に入ることなくウトウトし始める(笑)。そして眠気が吹っ飛ぶ瞬間があるのだ。
●●はどうなっているんだ?
私がかつてUPS(無停電電源装置)の取り換え工事をした時のことだ。米国製のUPSを入手し、それを入れ替えるという内容なのだが、肝心のUPSが日本に届くまでに製造から配送、現地到着まで6カ月かかることを、最初の着工前ミーティングでは報告していた。
UPSをメーカーに発注し4カ月後、進捗状況を報告すべく、通常の定期ミーティングでは、工程表に合わせた調達状況の報告、UPS取り換え作業に伴う取り換え作業プロセス計画書もメーカーとユーザー、米軍技術者を交え、何とかお互いが納得いく内容でまとまり始めていた。
ミーティングも無事に終わりかけた時、CORは一言こう言ったのだ。「【で現在UPSはどうなっているんだ?】」
我々はUPSの製造状況について報告を忘れていたのだ。しかも製造状況を時折報告することを約束していたことさえ忘れていた。メーカーには進捗状況を確認することさえ忘れていたのだ。
CORは最初は期限もいたって普通で何ら問題はなかった。しかしミーティングの途中から少し機嫌が悪そうな感じで接してきていることを薄々感じてはいた。私は素直に謝った。メーカーに製造状況を確認できておらず、現在の状況報告を忘れていたのだから。
私はしばらくずっとCORの指示を聞くしかなかった。アメリカ人は日本人に比べおしゃべりだと言われるが、彼は普段比較的物静かな方で、私は彼の態度が変わったことに少し驚いた。基本のホウレンソウができていなかったことを再度お詫びし、進捗状況をすぐにでも確認し報告すると約束し、今後もまめに進捗状況を確認することも約束した。
基地内でも駄目なものは駄目
日本とアメリカは文化も言葉も、人も全く異なる。しかしだ。この教訓からもわかる通り、ホウレンソウという必要最低限のルールは国が違えど同じだと思う。自分がお客さんの立場だったら報告をもらえないなんて不安だし、嫌だろう。「本当にこの会社大丈夫か?」なんて思われてしまう。
ホウレンソウ、ホウレンソウ。会社の信用は実はそこにあると思う。簡単なことだが、とても大切なことだ。米軍ビジネスでも同じである。ぜひこの教訓を覚えておいてほしい。