from: Maemori
ちょっと前のプロジェクトの話のことをお話しようと思う。
嘉手納基地のプロジェクトで、ある通信施設のプロジェクトをサポートしたときの話。
通信設備を落雷などの超高圧電流が流れたとき、システムがダウンしないための避雷針を設置するプロジェクトだった。
そのプロジェクトの仕様書では、避雷針の電材はすべてUL規格に沿った製品でかつ設置後は、UL規格協会の認定検査官の認証を得なければならないとあった。
※UL規格(Under writer Liability):メーカーには製造者賠償責任が伴うが、米国では、安全に製造された製品であることを認証するための損害保険会社の専門家による認証機関。UL規格が通っていない製品による事故や、災害の被害は保証されない。よってUL規格は米国内では製品保証の基準の一つとなっている。
その時のプロジェクトマネージャーは、何とかコストを抑えるために、サブミッタルで日本製の避雷針、grounding system(落雷用高圧電流アース)にて電材を承認申請し、無事承認を経て設置作業を行った。
設置作業も無事終わり、最終的な引渡し検査-を行う段階で、アメリカからUL気化器協会の認証検査官を招へいし、検査に挑んだ。
無事検査も終わるだろうとプロジェクトマネージャーは安心して検査に挑んだ。
ところがある、検査官は、施工した電材を一つずつ調べ、製品仕様の違いを指摘しはじめた。
UL規格認証用の分厚いマニュアル、規格番号と製品を照合し、仕様の違いを発見しては、指摘を2時間近くし続けた。
製品一つ一つを見比べて彼がマニュアルを閉じこう述べた。
UL規格とは異なる規格製品では検査、認証作業を終えることはできないと。
検査、認定エンジニアが必要なのはわかっているけれど…
このプロジェクトであえてUL規格の電材を使用せず、ULの認定エンジニアを招へいし、認証を得る検査を実施したのか?
理由はUL規格製品は日本製品に比べコストがかかる、仕様書の要求事項ではUL認定が必修だったので、招へいし検査を受ければ日本製の電材でも承認はもらっているし検査はOKだと思ったとのこと。
確かにプロジェクトマネージャーのいうことはわかる。会社としても利益を残すことはとても大事だ。
でもである、UL認定を受けるのであれば、ULの製品を使うべきで、UL以外の製品を承認を受けたとしても使用すればULの認定エンジニアはそれを良しとしないことを考えるべきだったのだ。
UL認定エンジニアの検査を受ける意味は、そのプロジェクトでの品質管理項目の一つであり、プロジェクトを請け負った会社の責任でもあるのだ。
認定エンジニアによる検査は、その会社のプロジェクトの品質を決める極めて重要な検査だったのはわかっているのであれば、初めから検査費用を織り込み、UL製品の調達コストを入れるべきだった。
認定エンジニアの検査は、米軍ビジネス、特に建築や機器設置、メンテナンスなどのサービス契約では頻繁に求められる項目でもあり、エンジニアを国内で探すことができない場合、アメリカ本国から招へいする必要が出てくる。
エンジニアによる検査は品質を保証するうえでとても大切な作業だ。
せっかく作り上げたあなたのプロジェクトの完成品を引渡し前に、コストの問題や怠慢で台無しにしないようにしっかりと仕様書を読み検査に挑もう。
P.S:UL認定エンジニアから認証をもらうのに、説得するのに苦労した。JIS規格とUL規格の許容値の互換性の比較、技術資料を提出し納得してもらったり、どうしても交換の必要のある製品を急きょアメリカ本国から取り寄せたりしてなんとか、検査を無事終えることができた。
米軍ビジネスはこういったことがよく起こる。仕様書をしっかり読むとこんな問題は起こらない。。。